村上春樹についての評論を読む。啓蒙主義的観点から誰の目にも見当違いの論を展開しているものが一つ、言うことは合っているが文章表現が個人的に気に食わないものが一つ、寸評ではあるが怜悧な知性を感じさせる賛同できる論が一つ。質や規模、更にはそれに対する評価が様々な評論が入り乱れる現状を見るに、知的発想はネット社会で出尽くして、信頼できる唯一の評価基準は自分が信頼できるかどうかのみとなった感がある。真実は普遍の定理から個人的現実にまで縮小した。そしてその個人的現実の中にも、周囲に与えるアセスメントの大小がある。……