最終日。朝起きれたので浜辺を歩く。天気もよく、また波も高すぎず、玲瓏な風が心地良かった。潮騒の音を聴きながら海辺の町の人々の暮らしを思う。思い浮かぶのは全校100人にも満たない中学校に通う男女だ。平成でも昭和でも、ましてやそれ以前でも無い、だがいつも心の中にある過去の中で二人は浜辺を歩いている。微妙な距離を保ちながら、お互いの手を意識しながら。

旅館を出て鋸山へ登り、海ほたるへ行った。風景はなかなか悪くなかったがいつか映像が、そして印象すらも消え去る。残るのはそれを見たという感覚だけだ。そしてそれが微妙に心理に作用して、各々の人生を変形させる。自分はその変形を映像化する力を持たねばならない。一つ一つやっていかなければならない。とにかく描けば体得するものだと先生方皆が言っていたので、それを信じて描こうと思う。