祖母に包丁を向けられた。切れない包丁だし腕力なんてたかが知れてるから刺されてもいいかとか一瞬考えたが結局奪い取った。

元々どうしようも無い人だったが、病気をして更にどうしようもなくなったと思う。理性の無い目で睨まれたが不思議と全く落ち着いていた。怒るよりむしろ悲しんでいた。自分はこの人のために様々なことをしているのに全く届いていない。それどころか命まで脅かされている。そう考えたら自分の置かれた境遇が情けなくなって、苦しくなって部屋で一人で泣いた。こんなに惨めな思いをなぜしなければならないのだろう。なぜこんな人と血が繋がっているのだろう。今まで散々嫌な思いをさせられて、この上なぜこんなに苦労しなければならないのか。悩まねばならないのか。世間の大多数の人々は、家に負い目を感じずにごく普通に暮らしている。自分にはそれができない。誰かと仲良くなっても、家のことには巻き込めないという思いがある。それがために接する態度に一線を引いてしまう。
お前のせいで俺の人生がめちゃくちゃだ。ついそう言ってしまった。言ってはいけないことだったと思う。なにもかもが息苦しい。